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画面から音が聴こえる

こんにちは、編集Eです。

新人作家さんの持ち込み原稿を見る時、どこをチェックしてますか?と聞かれることがあります。

もちろんたくさんポイントがありますが、「ここが描けている人」はその後グンと上手くなったなという私の経験から今回は2つだけ紹介します。

①手の表現が丁寧

②描き文字にこだわっている

この2つのポイントをしっかりと丁寧に描けている新人作家さんは、急激に伸びる傾向が高かったように感じます。(つたなくても意識して描いているかどうかが大事)

では、この2つのポイントを分かりやすくお伝えするために、昨日発売したばかりの「月刊コミックバンチ」9月号連載作品より紹介してみましょう。

①手の表現が丁寧

『鹿楓堂よついろ日和』よりピックアップしてみました。

どのコマもいきいきと躍動してますよね。台詞を伝えるためには人物の表情だけでなく、手の動きも使って感情を表現しているのが分かりますでしょうか。

読者への伝わり方が全然違います。しかも、メインのキャラクターだけでなく、小さなコマまで手を丁寧に描いているんです。細部まで気を配って感情を表現していますね。人物の顔ばかりに気を取られがちですが実は手が大事なんです。

うーん、ここまで意識してなかったな、という方もいるかもしれません。また、手を思い通りに描くのは難しいので避けている人もいるかもしれません。ぜひ練習してみてください。

新人作家さんにはとても参考になるのではないでしょうか?

②描き文字にこだわっている

漫画ならではの表現方法、それが描き文字です。

描き文字を使いこなせるようになれば「売れる」と、昔はよく言われたものです。『ジョジョ』や『ワンピース』など少年誌の作品は徹底的にこだわってますよね。描き文字を見るだけで、どの作品かわかるほどオリジナリティもある。実はそれくらい漫画には大事な要素なんです。なにげなく描いていてはもったいない。

私はいつもチェックしています。

というわけで、9月号を読んでいて「おっ!これはいい!」と思った描き文字を3つご紹介します。

まずは『15日の日曜日』より「電車が通りすぎる」表現。

キャラクターの渇ききった感情が、目の前を無情に通りすぎる快速電車の音にあらわれています。

これしかない、というくらい的確なチョイス。無機質かつざらついた書体。さらにキャラクターの左に大きく「ザ」、右に小さく「アッ」と分けて、さらに右にスペースを作る絶妙な配置も素晴らしいと思いました。

次は『怪獣自衛隊』より「怪獣が登場する」表現。

ひらがなで「ぬぅ」。

全編を通してカタカナの描き文字が続く『怪獣自衛隊』に、突如あらわれる「ぬぅ」。違和感、不穏、気持ち悪さ。怪獣の姿がはっきりとは見えないものの、どんな生物かが一発で表現されています。

さすがうまいですね。

最後は『クレイジーフードトラック』より「サバクコーチン」の登場。

こちらは上記の怪獣とは違い、押し寄せる生物の圧倒的な数とスピード、そして突如目の前に姿を現すサバクコーチンの迫力を2ページに渡り描き文字で表現しています。

いいですねー!

同じ「ザ」なのに全く違う音が聴こえてきます。形はもちろん、数、色、大きさ、すべてを視覚的にコントロール。まさにプロの技ですね。

まだまだ紹介したいところですが、本日はここまで。

(E)