編集M2です。
次第に暑さ和らぎ、過ごしやすくなって参りました。
秋の入り口でしょうか。
読書の秋とも言いますが、
本を読むにも、文字が読めねばなりません。
秋の夜長は、文字に触れる時間が長くなる・・・
ならば文字への偏愛もおのおのあるでしょう。
私にも個人的に好きな漢字があります。
それは
サイです。
文字の成り立ちはというと(解字と言います)
采+彡
で、
采は果実を摘み取る意を表し、草木を色料とすることから采色の意に用います。
その文彩を示す彡を加えて、彩の字となったようです。
なぜこの字が好きか。
白川静(故人)という古代漢字研究の第一人者がいるのですが、
その著書『字統』をかつて通読した際に、
采の部分が女性の手が果実を摘んでいる様の形象になっていて、
その姿がきらめいている様子であるという説明がなされていて、
まざまざとその姿を思い浮かべ感銘を受けたからです。
先に、
彡が文彩を示すと説明しましたが、
これは要するに、漫画的な表現です。
絵を描いて、横に☆をたくさんつけてそのキラキラ具合を表すことがあると思いますが、
その「キラキラ」という抽象的なものが彡の正体です。
一つの文字の中に、
「キラキラ」という目に見えないものを入れこんだ、
そのことにはっとさせられます。
なぜならそれは、その時代のヒトの感性そのものだからです。
現実に見えるものを超えて、
見たヒトの印象そのものが文字に乗り移っていることに、
文字成立のスペクタクルを感じずにおれません。
最後に宣伝です。
新潮社から出版されている、
『新潮日本語漢字辞典』
http://www.shinchosha.co.jp/book/730215/
これは漢字好きには重宝します。
よければぜひお手に取って、
読破してください。