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足し算で殻を破る

こんにちは、編集Eです。

新人編集者の頃、自分には編集技術も得意分野もなくて困り果てていたことがありました。

漫画家さんに自信をもって修正指示が出せず、出したところで説得力もないため信用されず。

虚勢をはって漫画家さんとガチンコ対峙するも空回り。打ち合わせの時間ばかり長くなり疲労困憊です。

「編集者といっても、これじゃただの素人じゃないか…」 と帰宅しては落ち込む。自信喪失の日々でした。

あるあるだと思います。

というかこの悩みのトンネルに入ることなくヒット作に恵まれ続ける編集なんているんでしょうか?

もしいたとしても、人間的に深みがないので放っておきましょう。(ただのやっかみ)

さて、そんな真っ暗闇の中、ある先輩からのアドバイスが一筋の光明となりました。

「編集者は絵も描けない、物語も作れない。でも人と人を繋ぐことができる。1人ではできない仕事を人脈を使って実現できるんだよ」 と。

さらにかぶせて

「たとえお前の能力が1しかなくても、100の力を持った人の助けを借りことができるなら、それは101の結果だ」といったニュアンスのことを言われてハッとしました。

自分は「1+1」の仕事しかしていない…。と。

敏腕編集者といえば、あらゆる分野に詳しい人。どんな新人作家さんでも連載に導くことができる人。ネームを読んで的確に修正指示を出し見違えるようにクオリティを上げることができる人。湧き出るアイデアで魔法のようにヒット作を連発できる人。ザ・カリスマ。そんな理想像を思い描いていたので、自分を「出来る人」に見せ掛けようとプライドばかり高くなっていたようです。実績も根拠もないのに偉そうな新人。

そんな編集者と一緒に仕事したくないですよね。

できなくて当たり前。人の力を借りればよし。抱え込まなくてもいいんだと思うと、肩から力が抜けて気持ちが楽になりました。

そこからは常に「今回の案件は誰に頼ろう」という発想に切り替え、各分野における師匠を見定めました。(まずは心の中で)

話術の師匠、デザインの師匠、取材の師匠、お洒落の師匠、変わったところでは飲み会の師匠まで取り揃える。自分だけで問題を解決せず、アイデアを人からどんどん取り込みました。頼られて嫌な顔をする人って案外いないものです。

プライドをかなぐり捨てるとあら不思議。そこからは打ち合わせがスムーズに回り始めました。

くるくるくるくる。

ちなみに、打ち合わせと会議は短ければ短いほどいいですね。調子がいい時ほど時間は短くなります。

長い時は何かしら根本的な問題があるので見つめ直しましょう。

とまあ、誰の参考になるかわかりませんが……振り返ればそういったことだったなという話。

(E)

サムネイルの写真は、国分寺の胡桃堂喫茶店のタルトとカフェオレ。机が広く静かなので漫画家さんとの打ち合わせでよく使います。